2022年11月27日

熟年超人A〜序章・初心者編(4)

そこで、と考えた
場所はともかく、この二人がなにかしてきたとき
素早く動いて、先手を取るか
泰然自若として、やらせるだけやらして不死身性を見せつけるか

とにかく、ここで揉め事を起こす
→@警察が介入してくる
→Aまたは、暴力団のような組織の加勢が押し寄せてくる
→Bここの連中が詫びを入れる、…まあこれはないか

どの程度で対応したらいいのかで、悩んでしまう、優柔不断の私
「で、安くなるの?」と訊いてみた
「はあ?、なに言ってんのおっさん」マンガのような展開
「俺らの出張費も追加、けってー!、だよなマスター」

「店ん中じゃなく、奥でやってくれよ」と、マスター
「立てよ、おっさん」若い方が私の右肘に手をかけて持ち上げようとする
年上の方は、若干面白そうな表情を浮かべ、見守っている
ところが、全然びくともしない私に、若い方が切れた風になった

「なにしがみついてんだよー、立てよおっさん!」
「あんた、体は丈夫な方?」これは、私の質問
「なにほざいてんだよーぉ、てめぇやんのかよー!」
年上の兄貴分は黙ったままこっちを見てる

その表情は、なにか変だな、と思ってるが、まさかこんなおっさんが
警察関係じゃないだろうな、と逡巡しているのがよく分かる
今度は、全力で、両手で私の襟元を掴んで引き上げようとする
まあ、大分年季が入ったジャケットだから、ちょっとなら傷んでもいいが
ただ、耳元でがなってるんで、煩くってしょうがない

右の手で、若い奴の脇腹を掴んで、軽〜く力を入れてみた
うわあー、と言って若い男は身を伸ばして逃げようと悶える
手はそのままにして、兄貴分とマスターの様子を見てみる
二人は驚いて、固まったままになっている

さあ、どうしよう、この先と、思っていたら
マスターが携帯でどこかに電話してる
あちゃー、こりゃ警察か暴力団の助っ人かなんか来るなぁ
そうなんだ、この暴力的な展開が、どんどんエスカレートするとき
それに対応していくと、収拾がつかなくなりそうだ

とりあえずここから離脱したとしても、相手は組織的に対処してくるだろうから
いくら超人でも、混戦状態になれば、丁寧な対応が疎かになって、死人が出たりして
結果、世間が敵視してくるようになったら、そこからの名誉挽回は、しんどそうだ
まだ、決めた訳ではないが、日本で超人活動をするときは、そこに気を付けないとな

顔もじきに分かってしまい、家族にも影響が及ぶだろうし
ここはなんとしても正義の立場で悪を懲らしめる”じゃないと、いかんだろう
じゃあ、と心も決まったので、若いのをぽんと放り出し、向かってこないのを確認してから
1200円をカウンターに置き、マスターの電話はまだ続いているので、
兄貴分の方に「じゃ、お代こんなもんだろ」と言っといて、店を出ようとした

「なに言ってやがる!」と
案の定、兄貴分が上着のポケットからスタンガンらしきものを取り出して身構えた
マスターは、まだ電話の相手と話しているが、雰囲気からして、警察の方ではなさそうだ
ぐずぐずしていると、この場でエスカレートしそうなので
すっと手を伸ばして、兄貴分を掴まえて横に軽く振った

だん、と店の壁にぶつかって反動で、前にすっ転ぶ
その衝撃で、カウンター側の壁に並んでいるグラスが落ちて、派手な音を立てた
こりゃ、1200円じゃ済まないな、と思ったが
持ち合わせは、あまり無かったので、知らんぷりで店を出た
マスターがなにか叫んでいたようだが(実は、ひどいじゃないか!と聞こえてた)

構わず、店の前の路地をすたすた歩いて、他の酔客に見られないところまで行こうとした
が、そんなにうまくいかないもんだ
店の外には、すでに十人近く野次馬が集まっていた
そりゃあそうだろう、結構大きな音が出たし、こんなぼったくりバーだから
ちょくちょく揉め事もあって、ご近所さんも耳をそばだててるはずだ

ま、ちょっとごめんなさいよ、ってな感じで、その場を離れようとしたが
早くも、援軍到来。人相の悪い連中が7〜8人、向こうから走って来る
どうしよう、迎え撃とうか、くるっと回って逃げようか、なんて逡巡していると
そのちょっとの間に、連中との間隔が詰まる

少し前から、「逃がさねぇぞ!」とか、「あっちに廻れ!」とか、喚いているのが聞こえる
おまけに一般人の見物もいるし、スマホで録っているのも数人いるから
ジャンプして雑居ビルの屋上にでも隠れちまおうか、というアイデアもボツだ
どうやっても人目から逃げ切れないなら、まだ早めだが、ヒーロー登場、といくか!

さっと雑居ビルと雑居ビルの隙間に飛び込み、ジャケットのポケットのから装カプセルを取り出す
車のキー程のカプセルの、小さな突起を押すと濃いグレイのコスチュームが、一瞬で全身を覆う
着ていたジャケットもズボンも、靴までもが圧縮されるのか、全部一緒に包み込まれてしまう
次回は、もう少しその辺りを考えたファッションにしないといかんかなあ…

スパイ○ーマン風の姿で雑居ビルの隙間から通りに出ると
駆け付けたばかりの(や)連中と、どんぴしゃの遭遇、になった

「ああ、なんだぁてめえ」「変な格好しやがってよぅ」
「てめえ、そりゃなんかのコスプレかぁ?」などと、口々に罵声を浴びせてくる
さっきのマスターが、腕っ節の強い奴だ、かなんか言ったせいなのか
一気に飛びかかって来ず、こちらを値踏みしている

遅れて到着した30代後半の、銀鼠のスーツを着込んだ
いかにも兄貴分といった輩が、無理して抑えたような声音を出して言う
「あんた、どこの誰かは知らねえが、ここらでこんなことされちゃあ
わしらとしちゃあ、黙ってらんないんだよ!」とドスを効かす

このスパイ○ダーマン衣装は、全身タイツ的な風体で、顔をマスクが覆っているから
口も無ければ、目も開いていない、言わば、のっぺらぼうなので返事がしにくい
黙って立っていると、右側の黒シャツに白ズボンという昭和ヤクザみたいな若いのが
バカヤロー!と吠えると、手にした鉄パイプを振り回してきた

左手で軽く払うと鉄パイプが、がっと鳴って
黒白の若い衆の手から跳ね飛んだ
その一連のアクションで、連中のスイッチが入り
若干ばらばらながら、連携動作的に私を目がけて襲いかかってくる

顔全体を覆っているものの、視界はすっきり確保されている状態で
彼の国の兵士達より遅い暴力動作は、どれも予備動作があって次に本動作が来るので
本動作の直前に、それを抑えるように素早く手を入れてやると
おもしろいように引っくり返るか、すっ転んでしまう

こりゃ、以前テレビで見た合気道の達人の技に似てるなぁ
と我ながら感動してしまった次第だ
4人ほど引っくり返したところで、武器が彼らの手に現れた
スタンガンが2人、サバイバルナイフが2人、
残りの4〜5人は木刀と鉄パイプ、金属バットを手にしている
兄貴分は、格好つけてスーツの内ポケットに手をやっている(ピストルか匕首か?)


遠巻きに見ていた観客の輪が広がる
ここで、先制攻撃に移ることにした
まず、兄貴分の内ポケットにいっていた右手の手首を捻る
ぽきっと音がして、兄貴の顔が歪んだ
内ポケットに触れた感じでは、金属の塊(やはり拳銃?)

そのまま、兄貴を掴んでおいて、一人置いた左横のスタンガン男に放り投げた
その反動を利用して、右隣に跳んで
並んで身構えているサバイバルナイフ2人の手を左右の手で掴んで
きゅっと捻ってやると、ナイフが路上に音を立てて落ちる

その間、約2秒ってところか
残りの連中を見ると、唖然として棒立ちになっている
多分、街頭の防犯カメラに、この立ち回りは映っており、何人かのスマホにも残り
下手をすれば、この界隈にやってきた時点の素の私の映像もあるかも知れないが

このスパイ○―マン風怪人の活躍と、一応現場に姿があっても
定年退職したばかりの私には辿り着けないだろうと踏んだ
びびって腰がひけた(や)連中と、それより後ろに下がった野次馬の隙間を衝いて
私は急激に疾走して、文字通り風のごとくその場から退散した

それも、人影が感じられなくなってからは
さらにスピードを上げて、暗い住宅地の夜道を、アパートの反対方向に走り
わざわざ遠回りして、コスチュームをカプセルに収めてから
元の服装に戻って、アパートに戻ったのだ
posted by 熟年超人K at 23:25| Comment(0) | 再編集版・序章
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