2022年12月01日

熟年超人A〜序章・初心者編(6)

そう言えば、定年前の7年間はSAプランニングで、単身赴任のアパート暮らし
妻はそれまで暮らしていたY市で、子供たちと一緒の生活
そのうち長女はアメリカに行き、妻は結婚した長男夫婦と同居している

私とは月に1〜2度会うくらいで
特に、私の定年間際の頃は、長男の嫁さんがそろそろ臨月になり
私は引き継ぎで忙しかったことと、例のアレのおかげで
2カ月近く会えていなかった

「そうかなぁ」と言って曖昧に微笑むと
「一人暮らしで若返るなんて、パパ浮気でもしてるんじゃ…」
そんなこと、ある訳ないよ、と言いながら
妻を見ると、別に本気で言っている訳でもないようだ

と、その時息子がこちらにやってきた
「お、父さんも来てくれたのか。母さん、まだ生まれてなくて…
結構時間がかかるんだね」
「そう、最初の子のときは時間かかるのよ。T彦のときも
随分かかって、母さん大変だったんだから」

息子のやって来た方向に『分娩室』があり
思わず超人眼が発動して
中の様子が見えてしまった
医師と看護師の会話も聴こえてしまった

こりゃいかん、と思って
頭を振って見ないよう聴かないようにする
ただ、もうすぐ生まれそうなのは分かったし
問題なさそうなのも分かった

それからしばらくして、若い看護師さんが
「赤ちゃん、無事お生まれですよ」と笑顔で告げに来た
その後は、想像通りの新たにパパになった息子との会話があり
別室に居たのか、嫁さん側の両親も程なくやって来て
挨拶など繰り返すうちに、一日が慌ただしく過ぎていった

その頃、私のアパートでは
聞き込みに来た駐在所の警官が103号室のお喋りおばさんから
先日の夜、私が飲みに行くと言って、出掛けたことや、なにやらをメモり

(や)に雇われた探偵が、アパートを突き止め
警官が帰ったら行動しようと
近所のコンビニでタバコに火を点けていたのである

一方、そんなこととはつゆ知らずの私
初めての孫が生まれたその日は
病院のあるY市の中心街にあるホテルに
妻と泊まることになっていた

息子は、明日の仕事の準備もあるからと
病院から大分離れた、隣の市の自分たちのマンションに帰っていき
嫁さんの両親も、ほっと安堵の表情で帰宅した

妻は、息子のマンションに一緒に戻りましょうか、と一度は言っていたが
本音は久しぶりに私と話がしたかったようで
「T彦がホテル予約してくれたから」と、手荷物など私に持たすと
病院の受付に訊いて、さっさとタクシーを呼ぶ

ホテルにチェックインしてから、近くの中華料理店に行って食事をし
部屋に戻ったのは、夜の10時を回った頃だった

生まれた孫の名前の候補と、このところの息子の奮闘ぶり
アメリカに行っている娘の国際電話での会話、などなど
さすがの妻も、話すことは大概無くなったのでは、と思っていたら
どっこい、妻は真面目な顔になって
「パパは、いつまで一人暮らしする気なの?」と、問うてきた

そうなのだ
今の私の超人活動を、家族に内緒のまま、いつまで続けられるだろう
早晩、警察とか内閣情報室(…だっけ)とか、公安とか
テレビドラマでおなじみの連中とか、(や)さんとか(CIAとかも?)が
私の正体を突き止めたら、家族を人質にして、超人力を利用しようとするだろう

まあ、そこまでいかなくても、マスコミやネットで正体を暴かれれば
息子の会社での立場とか、ご近所づきあいとか
いろいろ影響が出て来る確率は大だ

なんてったって、アメコミヒーローの時代とは違って
街中の録画カメラや、皆の持っているスマホの目は
かわし切れないだろうし
(この時点で、すでにそうなっていたのだが…)

こりゃぁ、どうしても妻にだけは打ち明けとかないと
いかんだろ、と思った私は決心して
実は…と、定年退職の日の夜に起きた出来事を
順を追って説明し始めた

のだが、みなまで聞かないうちに
「そんなの、断れないの。大体、なんのお手当ももらえないんでしょ」
と、痛いところを突いてくる

そりゃま、そうだが、今の僕はすごい力を持っていて
スー○ーマンみたいに空も飛べるし
バスくらいなら、持ち上げることだってできるんだよと、少々自慢げに話すと
「そうなの、で、それでなにをやろうって言うの
困ってる人を、パパがどれだけ助けられるの」

そりゃね、この間も西の方の国で
テロ集団みたいなのにやられかけてる人々を助けたり…
「へぇ〜。でも、ニュースにもなってないし
あの国のテロ集団が無くなったとか、言ってないじゃない」
まあ、時間がかかるんだよ、こういうことは

「そんなことやってる暇があるんだったら、どこかに就職して
もう少し働いてもらわないと…
お誕生祝いとか、お宮参りとか、この先、入園・入学とか、次の孫とか
娘の結婚式とか、お金がいくらあったって足りないのよ」

そうか、そりゃそうだよな
とにかく、妻の言うことの方が正しそうだった
でも、僕はもう超人になってしまっているわけだし
なんでもいいから、正義の味方らしいことしてないと
銀河連邦(のようなもの)の、管理官から叱られそうだしなぁ…

しかし、そんなことを妻に言ったって理解してもらえないだろうし
まあ、ママの言うことも分かったから
この力をうまく使って、お金を稼ぐから、と神妙に言うと
「でも、悪いことはしたら駄目。私たちだけじゃなくて
子供や孫に迷惑かかったら、どうにもならないんだからね」と釘を刺された

結局、私を信じてくれている妻の想いは
多少的外れではあったとしても、逆にそれこそ正しい解答なのだろう
家族を守り、ご近所づきあい、親戚付き合いも円滑にした上で
世界の平和に貢献する方法を

できること、できないこと、分かってしまって大丈夫なこと
できるだけ伏せておいた方が良さそうなこと、などの要素にまとめ
明日から、なにからどうやっていくのか
それから、収入をどう得るか、そんなことを整理して
行動方針をしっかり考えてみよう

と、思い至ったところで、妻も眠そうになってきたので
私もつきあって、ベッドにもぐりこむことにした
そんな間にも、周りではいろいろなことが進展し
どっちみち、私の進む道は、徐々に決まりつつあった

すでに、私の知り得ないところで、様々な動きが活発化していくのだが
もちろん、今の私は知る由もなく
呑気に、ホテルのベッドで今後の生活について考えたりしていたのであった

超人になってからも、日常の睡眠行動は無くなった訳ではなく
うつらうつら、考えの途中で眠ってしまった
確か、現在の日本で一番困っている問題をググって
専門知識が無くとも、不死身と体力で片付く仕事を探せばいいじゃないか
と、夢うつつで結論を得た気がして、それで安心て寝入ってしまった
posted by 熟年超人K at 22:01| Comment(0) | 再編集版・序章
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