2022年12月03日

熟年超人A〜序章・初心者編(7)

《物語の展開を広げるため、ここからは、私が後日知ったことも含めて記述します》

[ 私に初孫が生まれた翌日の9:30am ]
A県警の「組織犯罪対策局 捜査第四課」第二係係長のM野警部補は
2日前の夜、K市の飲み屋街のT組系S会の仕切る「バー夜露」で起きた
傷害事件の報告書を読み終わって、ふ〜っとため息をついた

「なぁ、K巡査部長よぉ、これって結局マル暴の抗争じゃなく
どこかの格闘技のプロの仕業だって結論に持ってこうとしとるの?」
「はい、あっ、ええ……、まあ、そういうことです」
「そういうことって、この飲み逃げのコスプレ野郎が、空手か合気道やっとる
有段者だって、そういうこと?」
「いや〜、とにかくですねぇ…」やっていた書類書きをしぶしぶ中断して
椅子から立ち上がると、M野警部補のデスクの前に移動したK刑事

「騒ぎを聞き付けて集まった連中に訊いても、丸暴らしくないんすよ、奴さん
なんちゅうか、動きはコスプレ通りの戦隊ものそのもので…」
「そいつの絵はないんか?」
「スマホで撮ってたのがあるんすが、どれもブレててよくわからないんすよ」
「そうか、なら、鑑識のパソきち連中に回して、なんちゃら分析を頼め」
「はい、了解っす!」


[ 同じ日の5:30pm ]
場所が変わって、N市の飲み屋街に近いマンションの一室では
S会組長のW野木が若頭のT野と、スプリングが少し弱くなったソファに
どし、っと腰を沈めて話をしている
「ほしたら、そいつはP連合の鉄砲玉っちゅう訳じゃないんじゃな」
「はぁ、どう考えてもド素人のおっさんだったみたいで、そいつが消えて
代わりにコスプレ野郎が暴れたようなんですわ。
いつもの探偵に探らせても、組関係の臭いは全くせんのですわ」
「ふ〜ん…。 ま、とにかく、や、 あの辺りの連中に
ウチの組が大人数出して、ド派手にあしらわれたっちこたぁ
本部にも知れちょるんや。 T野よぉ、どうにかせんとあかんぞぅ」
「へ、分かってま。野郎のヤサぁ、大体見当ついてますんでぇ
任せとって下さい」
*
う〜ん、こんな風にもう網が絞られてきてるなんて…
恐いもんですなぁ、どっちも


[ 話は戻って、私に初孫が生まれた翌日の9:00am ]
警察からも、(や)の雇った探偵からもマークされつつあった日に
私と妻は、ホテルのチェックアウトを済ませた後
しばし、ロビーラウンジの椅子に深々と座って
これからの相談をしていた

「それでパパは、あら、ジジかしら…まあいいわねパパで
パパはもうしばらくあっちに居たい、って言うのね」
いや、まあ、できたらだけど、昨夜考えて、仕事になりそうな事も
思いついたんで…と、いささか歯切れが悪い私

「そうなの。とにかくパパは転職多かったから、
退職金もちょっとしか振り込んでもらえてないんだし、
もうしばらくは、稼いでもらわないといけないしねぇ…」
そうそう、それで、折角スーパーマンみたいな力をもらえたんだから
もうひと頑張りしようと思ってる訳よ、と私

少し勢いづいた私に、妻がびしっと釘を打つ
「じゃあ、パパはそのすごいって言ってる力を活かした仕事を探してね
でも、あんまり変なことさせられそうだったら、無理しなくていいのよ
お金借りてなにかやろう、なんて考えないでね」
うん、わかってるよ、と少しへこんだ表情で返事をすると

「それじゃあ、わたしはあの子の家に帰るから
パパ、あんまり無理しちゃ駄目よ」
そう言い残して妻はホテルから歩いて、近くの駅に向かった

私はと言えば、そのままホテルのロビーで
妻に約束した通り、超人力を売り込む先をT電力と心に決め
営業活動の手順など思い巡らしていたのであった

そう、私の超人力があれば
あの原発事故の問題解決に役立つんじゃあないかと
考えていたんである

確か、スー○ーマン風のコスチュームは
マントが強力で、核攻撃にも耐えられる、となっていたから
誰も手が出せない溶けてる炉心だって取り出せそうじゃないか

むしろ、取り出した後の捨て先とか
自身の放射能汚染とかが問題になりそうだけど
その辺りは適当な質問してみて、グーグルさまから
お知恵を拝借すればなんとかなるんじゃ…

かなりテキトーだが
誰もが困っていて、かつ問題の対象が明確だし
暴力沙汰にはなりそうもないし
放射能汚染のことさえ解決できれば
家族に迷惑かけずに済みそうだ

この時点では、そんな能力の証明方法やら
その提案を受ける側の、責任問題やら
仮にうまくいくとして、そんな能力を発揮する人物が所属する
国家としての思惑や
所属していない国に与える衝撃にまでは、思い至っていなかった

なにしろ、どこかのスポーツリーグに突然押しかけて
それまでのスーパーな選手がやってきたことなど
一気に子ども扱いしてしまう超スーパーな人物を、人々がどう思うか
例えば、100mを1秒で走ったら
そいつは、なんだと思われるんだろう
そんな心配はしてみたものの
そこは、コスチュームで演出して
全くの超人だったら、そりゃまた別次元の評価だろうと
そう自分に言い聞かせて、ホテルを出たのは10時半を回った頃だった

帰りは、新幹線と在来線を乗り継いでK駅に着き、そこから歩いた
なにしろ超人になって良くなったのは、疲れないことだ
まあ、日常時のスピードが上がり過ぎないように、その辺りは気を使うが
気分としては、空港なんかにある動く歩道に乗ってる感じなのだ

そんな風に、アパートの近くまで戻って
ふと「周囲偵察」をする気になった
ちょっとコンビニに入って、週刊誌を適当に手にして
周囲偵察を開始する
アパートにも、周辺にもなんの動きもない
怪しい車なんかも停まっていない

それで、ほっとしてアパートの自分の部屋に戻った
本当はアパート内の各部屋も、超人眼でチェックすべきだったが
なんかいやらしい気がして、それはしなかった
まあ、していたとしても、目の付け所が素人の私には
微妙な変化など分かりはしなかったろうが

部屋に戻った私がやったのはパソコンの電源を入れ
インターネット検索で「原発事故処理」の項目を
チェックして、事故処理引き受けの窓口を探すことだった
そこには、様々な問題が
様々な立場の人物によって述べられている

特に〈原発事故処理をして頂ける方募集中〉なんてサイトは無いが
やはりT電力があらゆる責任を押し付けられて困っているようなので
ここは、コンサルティング会社の立場になってみて
まずトップから当ってみようと思い至った

最初のプレゼンは、相手の度肝を抜けられるなら、それが一番だから
スー○ーマン風コスチュームをまとって
T電力本店ビル14階の社長室に、空から飛びこむとか

うーん、それもいいけど
ここからスー○ーマンで飛び出すわけにはいかんし
かといって、アジトなんてないし
もう1軒アパート借りるのもなんだし…

まあいいや
大体のプロットは考え付いたんだし
ということで、その後は
テレビでも観ていようと思い、スイッチを入れる

なんというタイミング
間の良さと言うか、悪さと言うか
また、あのひと暴れした夜のことをやっているではないか

『…それでは、現場の飲み屋街に行っているDリポーターを呼んでみましょう
Dさん、そちらはどんな様子ですか?』

『あ、ハイ、こちらは2日前の夜、大乱闘があった現場です
この場所近くの飲食店の関係者に先ほどお話を伺っているので
Vどーぞ』

白いコック服の小太りの男性が
テレビカメラを意識しつつ、インタビュアーに答えている
『いやぁ、ひどい音がしたんで店の外覗いたら
何十人が喧嘩してるでしょ
とばっちり食いたくなかったんで、チラ見しかしてないけど
多分(や)さんたちが、何レンジャーか知らないけど
そいつと闘りあってて…』

『そのなんとかレンジャーは1人だったんですね』
『そう、1人、1人』
『で、相手は何十人』
『そ、何十人もいたねぇ』
『武器とか、なにかそういうもの、持っていたんでしょうか?』

ちょっと思い出そうとして遠い目になるコックさん
『持ってたんじゃないんじゃないかなぁ…
相手は、大体なにか持ってたけどね』

『すると、本物のなんとかレンジャーみたいに素手で暴れていた…?』
『う〜ん、暴れてたっていうか、暴れてた感じはあんまり無くて…』
『あしらってる、みたいな…?』

大きくうなずいて
『そう、あしらってる感じ、そうそう』
『それはすごいですねぇ、迫力あったでしょ?』

『それが…そうでもなくって。ただ、相手はホンコン映画みたいに
ぴゅんぴゅん飛んでたなぁ…』
その言葉が、途中から小さくなって
話しが途切れたところで録画が終わって、Dリポーターの映像に代わる

『まだあるんですよ、次が現場をスマホで録っていた方の映像です』
画面はスマホらしい縦長の映像に替わる
posted by 熟年超人K at 22:15| Comment(0) | 再編集版・序章
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: